眼瞼下垂とは?

眼瞼下垂とは、瞼が下がって物が見えにくくなる病気です。
また、瞼が下がっていなくても、努力して瞼を開けているために瞼が重い、開けづらい、眼が疲れると感じる場合もあります。

眼瞼下垂は、後天性のものと先天性(生まれつき)のものがあります。
後天性の眼瞼下垂は、腱膜性眼瞼下垂や外傷性眼瞼下垂があります。
ここでは代表的な腱膜性眼瞼下垂について説明します。

人間はおよそ1分間に20回、1日に2万回瞬きをします。1年では700万回、一生に7億〜8億回もの瞬きをすることになります。瞬きを繰り返していくうちに、瞼を上げる機能が徐々に衰えていきます。
この衰えは通常徐々に進行していくものなので、瞼が開けづらいと感じていてもそれが病気だとは自覚しにくいものです。また、眼瞼下垂が原因で起こる肩こりや頭痛などの随伴症状があっても、それが眼瞼下垂から来ていると気が付きにくかったりします。

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瞼の解剖と機能

瞼板:瞼の縁にある硬い組織で瞼の形を支えます。瞼板の中にはマイボーム腺という分泌腺があります。ここから分泌される脂分や涙が瞬きのたびに眼球に供給され、眼球を乾燥から守っています。

眼瞼挙筋・挙筋腱膜:瞼を持ち上げる筋肉で、瞼の縁にいくにつれて挙筋腱膜という薄い膜状の組織になり瞼板に付着します。この挙筋腱膜の先端は瞼板だけではなく、枝分かれして皮膚へも付着しており、その付着の仕方で「二重まぶた」や「一重まぶた」など瞼の形に影響します。

ミュラー筋:挙筋腱膜の裏側にある筋肉で、ミュラー筋も瞼を持ち上げる作用があります。眼瞼挙筋は動眼神経支配なのに対し、ミュラー筋は交感神経支配の筋肉で、この筋肉の伸展刺激は瞼を開けることだけでなく、脳の覚醒や自律神経に影響を与えることがわかっています。

前頭筋:眉毛を持ち上げる筋肉です。前頭筋が収縮すると眉毛が持ち上がり、瞼が開きます。眉毛が上がると、おでこに横ジワができます。

眼輪筋:瞼をぐるりと囲む筋肉で、瞼を閉じる作用があります。目の下の涙袋はこの筋肉の瞼板部の膨らみによるものです。

眼瞼挙筋が収縮するとその先にある挙筋腱膜が引っ張られ、瞼板が持ち上がることで瞼が開きます。
ミュラー筋や前頭筋も瞼を持ち上げる補助的な働きをしています。
眼瞼挙筋が収縮をやめ、眼輪筋が収縮することで瞼が閉じます。

腱膜性眼瞼下垂のしくみ

挙筋腱膜が伸びてしまったり、挙筋腱膜と瞼板の繋がりが緩んでしまうと、眼瞼挙筋の収縮力が瞼板にうまく伝わらず、瞼の開きが悪くなります。このような状態では、前頭筋やミュラー筋が補助的に(代償的に)収縮し、なんとか開瞼は維持されます。
さらに悪化すると挙筋腱膜が完全にはずれ、ミュラー筋も伸び切って収縮できなくなり開瞼できなくなります。

加齢性変化で徐々に進行していくものなので、人は誰もが眼瞼下垂になるといえますが、その程度には個人差があります。
また、コンタクトレンズを長期装用している方や、アトピー性皮膚炎や花粉症などで瞼を擦る癖のある方では比較的若い時から症状が出ます。10代、20代で下垂している方もいらっしゃいます。
コンタクトレンズの装用時に、瞼を指で持ち上げたり引っ張ったりすると挙筋腱膜が伸びたり、緩む原因となります。また、ハードコンタクトレンズの装用では、レンズの厚みにより瞼の裏側から挙筋腱膜やミュラー筋を薄くすり減らしてしまうことも原因です。

また、眼瞼挙筋の状態が正常でも、加齢により瞼の皮膚が伸びて見かけ上瞼が下がって見えることがあります。これを眼瞼皮膚弛緩症といいます。

眼瞼下垂の症状

挙筋腱膜が伸びてしまったり、挙筋腱膜と瞼板の繋がりが緩んだりして、眼瞼挙筋の収縮力が瞼板にうまく伝わらなくなると瞼の開きが悪くなります。すると、眼瞼挙筋が強く収縮したり、前頭筋やミュラー筋が代償的に収縮したりしてなんとか開瞼を維持しようとします。
このような無理した状態では様々な症状が出てきてしまいます。

瞼が下がり物が見えにくい

瞼の開きが悪くなるため、瞼が下がって物が見えにくくなり、視野が狭くなったと感じます。
最初のうちは、前頭筋やミュラー筋が補助的に(代償的に)働いてくれるので瞼の下がりは軽度ですが、徐々に進行していきます。

顔貌の変化、老けて見える

今までくっきりと開いていた瞼が下がることで、黒目の上半分に瞼が被さり、眠そうで疲れたように見えてしまいます。
眼瞼挙筋を強く収縮させ瞼を奥に引っ張るため、瞼の上が落ち窪む方もいます。
また、前頭筋が眉毛を上げることで、おでこに横シワができ、目と眉毛の間が広がります。
これらの結果、実際の年齢よりも老けた印象になってしまいます。

肩こり、首こり

テレビや雑誌などでも時々取り上げられているので、眼瞼下垂で肩こりになるということは知っている方も多いと思います。

眼瞼下垂になると前頭筋が収縮し、眉毛を持ち上げて瞼を開ける補助的な働きをします。前頭筋の収縮は後頭部の筋肉を緊張させ、首こり・肩こりの原因になります。

また、眼瞼下垂の患者さんは顎をあげて首を後屈させて物をみていることも多く、肩の筋肉に負担がかかり、肩こりの原因になります。

頭痛

眼瞼下垂で頭痛が起こるメカニズムは複数あります。

まず、眼瞼挙筋が一生懸命収縮するために目の奥の痛みが生じます。パソコンやスマホの画面を長時間みた後に生じる目の奥の痛み、いわゆる眼精疲労の痛みの一部は眼瞼下垂が原因で起こっています。

次に前頭筋を収縮させておでこに皺を作って眉毛を持ち上げますが、この際後頭部の筋肉も緊張し、後頭部の痛みやこりの原因になります。

さらに、歯を噛み締め交感神経を刺激してミュラー筋を収縮させて瞼を開けている状態では、物を噛む筋肉(咀嚼筋)である側頭筋が常に緊張しているため、こめかみや側頭部の頭痛の原因になります。

自律神経症状

ミュラー筋の過剰な収縮は交感神経を過緊張させ、様々な自律神経症状を引き起こす可能性があります。
朝から晩まで体に力を入れて緊張して生活しているような状態ですので、不調が出てきます。
全身がだるい、不安、眠れないなどの症状がでることがあります。

眼瞼下垂の治療

眼瞼下垂の治療は基本的に手術となります。
眼瞼下垂は、挙筋腱膜が伸びてしまったり、挙筋腱膜と瞼板の繋がりが緩んで、眼瞼挙筋の収縮力が瞼板にうまく伝わらない状態です。
そのため、手術では挙筋腱膜を瞼板に再固定して、眼瞼挙筋の収縮が瞼板に伝わるようにします。
眼瞼挙筋の力で瞼を容易に開けられるようになるため、代償的な働きをしていた前頭筋やミュラー筋は過剰に働く必要がなくなり、先ほどあげたような症状が改善します。

静岡県、浜松市で眼瞼下垂でお悩みの方は是非ご相談ください。

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